日立が法規制と設備条件を結ぶ事業機会発見支援のAIエージェント技術を開発
日立は、脱炭素政策の強化や地政学リスクの高まりなどによる市場環境の急速な変化を捉え、提案先候補の抽出や事業機会の発見を支援する「オポチュニティーシーキング技術」を開発しました。気候変動関連法規などのマクロ情報と、設備の仕様や運用条件などのミクロ情報を組み合わせて分析するAIエージェント技術です。初期検証では、東南アジアの石炭火力発電所を対象に、コージェネレーションシステムの提案先候補を抽出できることを確認しました。
複雑な規制と設備条件の確認にかかる負担を解消
近年、脱炭素政策の強化や地政学リスクの高まりにより、企業には市場環境の変化に対応しながら成長機会を見極める姿勢が求められています。特にエネルギー・産業分野では環境規制の強化に伴い、既存設備の更新や温室効果ガス排出削減への対応が重要になっています。
しかし、提案活動に必要な情報は国や地域ごとに異なる法規制、設備の仕様、運用条件など多岐にわたります。どの設備が規制対応や更新提案の対象になるかを見極めるには多数の文書やデータを横断して確認する必要があり、提案先の選定に時間がかかり、見落としなく絞り込むことが難しい状況でした。また、AIを用いた提案作業の自動化が進む一方で、AIの出力結果の根拠が見えにくく、透明性の確保が難しい点も課題となっていました。
3つのエージェントで構成される「オポチュニティーシーキング技術」
日立が開発した「オポチュニティーシーキング技術」は、自然災害やパンデミックに対して製造業サプライチェーンを強靭化する技術として開発された「デジタルオブザーバトリ」を拡張し、対象範囲を持続可能な事業成長へと広げたものです。主に以下の3つの特長を持っています。
- 法規制情報の抽出・構造化技術:情報抽出エージェントが、気候変動関連法規などの文書群から設備の更新や改修に関わる記述を抽出し、AIで扱いやすい構造化データに整理します。手作業による法律文書の確認負担を減らし、提案活動に必要な情報を効率的に把握しやすくします。
- マクロ情報とミクロ情報のデータ連携技術:機会分析エージェントが、抽出された法規制などのマクロ情報を発電所ごとの設備特性や運用条件といったミクロ情報に対応付け、提案先候補を抽出・スコアリングします。これにより、GX(Green Transformation)や設備更新の需要が高まる未開拓の提案先を見つけやすくなります。
- 説明可能なレポート生成技術:レポートエージェントが、候補ごとの評価結果とともに、判断根拠となった法規制の記述や設備条件を対応付けて提示します。AIの出力結果がブラックボックスになるのを防ぎ、根拠を確認しながら意思決定を進めやすくします。
東南アジアの石炭火力発電所を対象にした初期検証
今回の初期検証では、Climate Change Laws of the World Datasetから抽出した法規制データと、Global Coal Plant Trackerの発電所データを用いました。
東南アジアの石炭火力発電所を対象に分析を実施し、規制圧力と設備特性を踏まえたコージェネレーションシステム(1つの燃料から電力と熱を同時に生み出して供給するシステム)の提案先候補を抽出できることを確認しました。これにより、営業や新規事業開発の担当者における確認負担を減らし、GXや設備更新の必要性が高い候補を根拠とともに把握しやすくなるとしています。
分析対象の拡充と他領域への展開をめざす
日立は今後、法規制に加えて気候データ、ニュースデータ、医療・金融・法律などの特定業界に特化したドメイン特化データなど分析対象を拡充し、市場環境の変化を多面的に捉えられるよう技術の高度化を進めます。
Lumada 3.0を支えるドメインナレッジで強化されたAI技術の一つとして、エネルギー分野に加え、モビリティや産業分野など法規制や外部環境の変化の影響が大きい領域への展開をめざします。なお、本成果の一部は、2026年10月21日~23日にイタリアで開催される「24th International Conference on Practical Applications of Agents and Multi-Agent Systems (PAAMS 2026)」で発表される予定です。
本記事は日立(株式会社日立製作所)の発表をもとに作成しました。
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