水路網の設定が洪水時における流域の水収支に与える影響を解明 ~数値解析における水路網の適切な設定範囲を提示~
東京理科大学、洪水解析における水路網設定の影響を解明
CATEGORY: テクノロジー
東京理科大学の研究グループは、千葉県一宮川流域で2023年9月に発生した大規模氾濫を対象に、水路網の設定が河川の水位や流量、流域全体の水収支に与える影響を数値解析により明らかにしました。
研究では、水路網の設定範囲を示す指標として上流集水面積の閾値(Amin)を提案し、対象流域では0.1 ~ 0.2 km2が適切であることを示しました。本研究成果は、2026年9月30日に国際学術誌「Journal of Hydrology: Regional Studies」にオンライン掲載されています。
水路網が流域全体の水動態に与える影響
研究グループは、降雨流出氾濫モデル(RRIモデル)と河川流モデル(RFモデル)を融合したRRI-RFモデルを用い、Aminを変えて複数の水路網を設定したシミュレーションを実施しました。
解析の結果、水路網が発達していると洪水の上昇期に河川への流出が促進され、水位と流量の上昇が早まることが判明しました。水路網の設定範囲を上流まで拡張すると、斜面に滞留する水量が減少する一方、水路および河川内の水量、下流端の累積流出量が増加しました。また、水路は流域内の排水を促進して浸水深を低減させる一方、河川内の流量や下流端の累積流出量を増加させるなど、流域全体の水収支や水理特性、河川水位、流量、氾濫面積、氾濫量に明確な違いが生じることが示されました。
上流集水面積の閾値(Amin)による評価
水路網、河川水位、氾濫計算の再現性から精度を比較したところ、対象とした一宮川流域の洪水では主要な水路の再現にAmin = 0.1 km2、河川水位の再現性も考慮するとAmin = 0.1 ~ 0.2 km2が適切であることがわかりました。特に谷地形の流域では、主要な水路を取り込むことが解析精度の向上に寄与することも示されています。
従来の指標である排水密度は、土地利用によって水路網の密な流域と疎な流域がある場合の水収支の評価には適していませんが、Aminを指標とすることで地形的特徴や水収支の特性をより適切に反映できる可能性が示唆されました。なお、この範囲は対象流域と洪水に固有のものであるため、他流域への適用には条件を変更した検証が必要とされています。
研究の意義と今後の展望
研究を主導した二瓶泰雄教授は、水路網をモデル内に直接反映することでパラメータ調整への依存を抑え、より実現象に近い流域内の水の動きを再現できると考え研究に取り組んだとし、Aminによる水路網の設定方法がモデルの高度化に活用できると説明しています。
今後、さまざまな流域や洪水条件での検証を重ねることで、気候変動下における流域治水や洪水対策の効果を定量的に評価するための基礎的な知見となることが期待されています。なお、本研究は公益財団法人 河川財団の助成を受けて実施されました。
論文情報
- 雑誌名:Journal of Hydrology: Regional Studies
- 論文タイトル:Impact of drainage channel network on hydrologic and hydraulic responses over the entire basin
- 著者:Ryutaro Otsuka, Kengo Ohno, Yasuo Nihei
- DOI:10.1016/j.ejrh.2026.104031
本記事は東京理科大学の発表をもとに作成されました。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



