Dellows News

紙資源循環の課題巡り初の共催セミナー 日本製紙連合会SDGs委員会など

日本製紙連合会SDGs委員会と公益財団法人古紙再生促進センターは、2026年10月9日に紙パルプ会館で、会場参加とオンライン参加を併用したハイブリッド形式の共催セミナー「動脈と静脈の両視点から考える紙資源循環のこれから」を開催した。両者による共催セミナーの開催は初となり、参加申込は240名を超えた。古紙回収現場と包装設計の両視点から紙資源循環を取り巻く変化や課題が共有され、製造・流通を担う動脈と回収・再資源化を担う静脈の双方が対話を深めた。

製造・流通と再資源化をつなぐ対話の契機に

脱プラスチックや紙化の進展、生活者の行動変化、資源循環への関心の高まりを背景に、紙リサイクルの環境は変化している。回収現場では、雑がみをはじめとする未回収古紙の存在や紙製容器包装の多様化、消費者の分別行動といった課題が顕在化している。

一方で、動脈と静脈の間には包装設計や情報表示、消費者への伝え方、再資源化適性などを巡る認識の差が存在している。セミナーは双方の視点から現状を共有し、設計から回収・再資源化までを一体で捉えながら、持続可能な紙リサイクルと資源循環コミュニケーションのあり方を検討する場として企画された。

雑がみの回収促進と行動変容へのアプローチ

公益財団法人古紙再生促進センターの川上正智専務理事は、「紙リサイクルの現場から考える循環経済―『雑がみ問題』から見える課題と可能性」と題して登壇した。

川上専務理事は、紙リサイクルを社会を映す鏡と位置づけ、人口減少や高齢化、デジタル化が古紙の発生や回収に与える影響を説明した。新聞・雑誌古紙が減少して雑がみの重要性が増す中、資源として活用できる紙が可燃ごみに残されている現状を指摘。市民の感覚を踏まえた啓発の必要性を挙げ、大阪大学大学院の松村真宏教授による仕掛学を取り入れた「雑がみさまを探せ!」の実践例を紹介した。また、汚れや素材、加工による難処理古紙への対応には現場の課題共有が不可欠であり、燃やすコストから活かす価値への転換が重要であると強調した。

機能性と資源循環の両立による市場拡大

続いて、株式会社パックエール代表取締役の内村元一氏が「紙化をブームで終わらせない―機能性と資源循環を両立し、紙包装市場を拡げる」をテーマに講演を行った。

内村氏は欧州の包装規制や環境表示の厳格化に触れ、日本においても素材を問わず資源化できない廃棄物の削減へ評価軸を転換する必要性を提示した。紙マークのリサイクル適性に対する誤解を解き、実態に即した分別表示や情報開示を求めた。また、保存性や加工適性、リサイクル適性を両立するために材料と設備の両面から対応する重要性を説き、動脈と静脈が設計段階から連携して紙が選ばれる市場をつくる必要性を訴えた。

再資源化に向けた日本版「ストライクゾーン」の構築

質疑応答では、海外規制への対応や紙包装のリサイクル適性、環境対応に伴う費用負担が議論された。その中で、動脈と静脈が連携して再資源化できる製品や包装の条件を明確にする「ストライクゾーン」をつくる必要性が示された。欧州の業界横断の事例を参考に、製造側と回収・再資源化側が受入条件を共有して範囲を広げる重要性や、現場の制約を理解し合える意見交換の場の重要性が話し合われた。

今回の取り組みについて、公益財団法人古紙再生促進センター代表理事の長谷川一郎氏は、紙に関わる多様な分野の関係者がそれぞれの立場から資源循環を考え、異なる視点に触れる場となることに期待を示した。また、日本製紙連合会SDGs委員会委員長の渡邊惠子氏は、双方が深く連携することで「日本の紙リサイクルは持続可能なものへと進化していくと考える」と述べている。

本記事は日本製紙連合会SDGs委員会および公益財団法人古紙再生促進センターの発表をもとに作成。

アクセスランキング

今日

1週間