飲酒運転根絶へ 、「アルコール・インターロック」開発会社が目指す機器の提供から意識改革まで
飲酒運転を物理的に防ぐ「アルコール・インターロック」。この装置を開発・製造する東海電子は、企業向けの販売から個人の相談対応へと活動を広げている。しかし、機器の提供だけでは解決できない課題も見えてきた。家族の切実な悩みに向き合う同社の取り組みを取材した。
「家族の飲酒運転を止めたい。でも警察には通報したくない」
そんな切実な悩みを抱える人々からの相談が、東海電子株式会社には日々寄せられている。同社が開発・製造する「アルコール・インターロック」は、運転者が飲酒していた場合に車のエンジンをかからなくする装置だ。
事故をきっかけに個人向けへ
「もともとは企業向け、特にトラックやバス会社向けに販売していました」と語るのは、2024年10月に新設されたインターロック推進事業部の部長、中山春美さんだ。
転機となったのは、2021年6月に千葉県八街市で起きた痛ましい事故だった。飲酒運転のトラックが下校途中の児童の列に突っ込み、2名が亡くなり3名が重症を負う事故が発生。この事故をきっかけに、アルコール・インターロックについての報道が増え、同時に個人からの問い合わせも急増したという。
「ウェブサイトを見て連絡をくださる方の中には、『田舎に住む父親が飲酒運転をしているようだ。遠方に住む私たちには状況がよく分からない。でも、同じような加害者になってほしくない』といった切実な声が数多くありました」
装置だけでは解決できない問題
アルコール・インターロックは、運転席近くに設置された検知器に約3〜4秒間呼気を吹き込むことで作動する。アルコールが検知されなければエンジンをかけることができ、検知された場合はエンジンがかからない仕組みだ。
しかし中山さんは、装置の設置だけでは根本的な解決にならないと指摘する。
「毎日のように飲酒運転をしている家族がいる。それを止めようとしても止められない。そういった相談を受けることが多いんです。インターロックを取り付けて『ありがとう、安心しました』という言葉をいただくことはありますが、当事者の飲酒の問題自体は何も解決していません」
社会全体で取り組むべき課題
海外では、飲酒運転で検挙された人にアルコール・インターロックの装着が義務付けられている国もある。さらに定期的な測定結果の確認も行われ、アルコールが検知された場合には罰則が科される。
一方、日本では検挙後の免許取り消しや停止で終わってしまう。「このような方は何度も同じことを繰り返してしまう。依存症という問題にも気付かないまま飲み続けて、体調を壊すケースもあります」
そこで同社は今年10月、インターロック推進事業部を発足。単なる機器の販売にとどまらず、行政や医療機関との連携も視野に入れた活動を始めている。
「警察での免許更新時に飲酒状況のチェックを行い、必要であれば病院での確認を促す。あるいは地域包括支援センターなどとも連携して見守りを行う。そういった社会全体での取り組みが必要なんです」
飲酒運転の問題は、一企業の取り組みだけでは解決できない。東海電子は、それを社会全体の課題として捉え、解決への道を模索している。
アルコールインターロック.comサイト
日本のアルコールインターロック法制化を目指すためのあらゆる活動を推進
https://alcohol-interlock.com/