藤嶋咲子の新作展「WRONG HERO」、ゲームで問うジェンダー

株式会社TRiCERAが運営するアートギャラリー「9s Gallery」にて、メディアアーティスト藤嶋咲子の個展「WRONG HERO」が2024年10月19日から10月27日まで開催される。

藤嶋咲子は、2020年にバーチャルデモを発表し大きな話題を呼んだアーティストだ。SNSの投稿へのリポスト数を参加者とみなし、その人数分のアバターをバーチャル国会議事堂に配置しSNSに投稿するという、コロナ禍で外出や集合がままならない中で個人の小さな声を一つのシュプレヒコールに束ね遠くに届ける試みとして注目を集めた。

今回の新作『WRONG HERO』は、タイムラインにテキストとして埋没していく「個人の声」を、テキストだけではないかたちで体験できるようにというコンセプトで着想されたビデオゲーム形式の作品だ。主人公は女性で、プレイヤーは彼女を通してNPCと交流し、ジェンダーによる偏見をもった様々な言葉を投げかけられる。NPCの言動は、藤嶋がSNSで集めたジェンダーによる偏見を受けた人々の声だという。

もう一つの作品では、プレイヤー自身が自分の言葉でNPCと対話できる。『WRONG HERO』に登場したドット絵のNPCがリアリスティックな姿でモニターに表示され、生成AIを用いてプレイヤーに応答する仕組みだ。

本展は、9s Galleryにとって初のメディアアートを主体にした展覧会。アートは「分からない」からこそ、それに参加することは「分からない」ということを「分かる」営みであり、完全には互いを理解しえない私たちの壁を越える唯一のきっかけになるのかもしれない。