ウクライナ新学期15日で空襲警報1,000回超 ユニセフが教育危機を報告
2026年9月15日、ユニセフ(国連児童基金)副広報官のリカルド・ピレス氏は、ウクライナのスーミからジュネーブの国連定例記者会見にオンラインで参加し、戦争が子どもの教育に与える深刻な影響を報告しました。2022年2月に始まった戦争が5年目に入る中、9月1日の新学年度開始からわずか15日間でウクライナ全土の空襲警報が1,000回を超えるなど、子どもたちの学ぶ権利が脅かされ続けています。戦争開始以降に被害を受けた国内の教育施設は4,200施設を超えており、学習の遅れや心理的負担が浮き彫りとなっています。
激化する空襲警報と教育施設への甚大な被害
9月1日の新学期開始から15日間で発せられた1,000回超の空襲警報は、前年同期のほぼ2倍に上り、この時期としては戦争開始以降で最も多い件数となりました。これは1日当たり100回超、1時間当たり少なくとも4回警報が鳴った計算になります。今年最も多くの空襲を受けた地域には、スーミ、ミコライウ、オデーサが含まれています。

スーミ州では教育施設のほぼ半数が紛争で損傷または破壊されました。ウクライナ政府の推計によると、今年1月から8月の間にも何百もの教育施設が被害に遭い、戦争開始以降の被害総数は4,200施設を超えています。前線近くでは、ユニセフが地下シェルターを学校に転用した22の施設(最大300人を収容可能)を設置支援するなど、安全を確保しながら教育を継続する取り組みが行われています。
学力調査で浮き彫りになる学習格差と資源不足
経済開発協力機構(OECD)が生徒の学習到達度調査(PISA)の最新結果を公表し、戦闘地域で過去5年間の教育を受けてきた15歳の子どもの多くが、基礎的な習熟レベルに達していない実態が明らかになりました。
調査結果によると、科学的リテラシーで約3分の1、数学的リテラシーと読解力でおよそ半数の生徒が基礎的レベルに達しておらず、OECD平均と比較して読解で約2年分、数学と科学で約1年半分の学習差に相当します。また、生徒の56%が3分野中少なくとも1分野で、29%が3分野すべてで基礎レベルに達していませんでした。

さらに、学校長への調査では、生徒の61%が教材や備品が不足している学校に、54%がデジタル学習資源が不十分な学校に通っていることが示されました。なお、この調査は安全上の制約からウクライナ国内17の区域に限定されており、前線に近い学校ではさらに資源が不足していると考えられています。調査対象外となったのは、ドニプロペトロウスク州、ドネツク州、ハルキウ州、ルハンスク州、ザポリッジャ州、ヘルソン州、ミコライウ州、スーミ州、クリミア自治共和国、セヴァストーポリ市の10区域です。
学びを続ける子どもたちと迫る冬の課題
厳しい環境下でも、保護者や政府、人道支援機関の取り組みにより、この9月には71万2,000人超の就学前児童を含む420万人近い子どもと、36万6,000人を超える教員が学びの場に戻りました。しかし、空襲の影響によりハイブリッド型や完全オンライン型の学習を余儀なくされるケースが多く、就学前児童のほぼ半数は通常の就学前教育や保育を受けられていません。

今後は冬の寒さとインフラへの攻撃が新たな懸念となっています。昨年は約200万人の子どもが暖房や電気、水のない過酷な環境に置かれ、停電によってオンライン授業も影響を受けました。これに対しユニセフは、2026~2027年の冬季支援計画として54万人の子どもを含む300万人への支援を目指し、暖房システムの修理や学校への非常用電源の提供などを通じて37万5,000人の生徒が対面授業を継続できるよう支援を進めています。
組織概要
- ユニセフ(UNICEF:国連児童基金):すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関。現在、ユニセフ国内委員会が活動する32の国と地域を含む約190の国と地域で活動を展開。(https://www.unicef.org )
- 公益財団法人 日本ユニセフ協会:32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内で民間で唯一ユニセフを代表する組織。(https://www.unicef.or.jp )
本記事はユニセフ(国連児童基金)の発表をもとに作成しました。
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