オーディオデータ送信システム「ミュートラックス」に中継子機、距離と台数制限を解消
株式会社ミューシグナルは、無線LANを利用したオーディオデータ送信システム「ミュートラックス」の子機に中継機能を実装し、伝達距離と接続台数を無制限にする技術の開発に成功したと発表した。
ミュートラックスは、オーディオケーブルの敷設が難しい商業施設、製造工場、屋外イベントなどでワイヤレスで音を届けることができる革新的なオーディオシステムだ。Bluetoothでは実現が難しかった長距離、複数台接続、安定通信を可能にし、2023年の発表以降、半導体製造ライン、鉄道整備工場、移動式遊具、観覧車、商店街などで採用されている。
従来のミュートラックスは、1台の親機(MT-SA0)と複数台の子機(MT-CS0)を無線LANで接続し、オーディオデータを送受信するシステムだった。親機と子機の通信可能距離は約70メートルで、それ以上の距離にある子機にデータを送る場合は、市販の無線LAN中継器を使用する必要があった。しかし、市販の中継器を使用する場合、製品ごとに設定方法が異なり、中継器以降の通信可能距離も機種に依存するという問題があった。
今回開発された中継子機(CS-CR0)は、従来の子機に中継機能を追加したもので、中継機能の設定を簡略化し、親機と同等の通信可能距離を実現している。また、中継子機は親機から受け取ったオーディオデータを複製し、後段の子機群に渡すため、後段の子機の台数が増えても親機周辺の通信負荷が増えることがなく、事実上無限に子機を増やすことが可能になった。
中継子機には2つのディップスイッチが搭載されており、1つ目のディップスイッチで接続するSSIDを、2つ目のディップスイッチで公開するSSIDを指定することで、設置現場に合わせたネットワーク構成を正確に指定できる。
この仕様を盛り込んだネットワークオーディオシステムが、富士スピードウェイに新たにオープンした施設「FUJI MOTORSPORTS FOREST」のウェルカムセンターに初導入された。スロープや天井の照明用ダクトレール、展示されているレーシングカーの下にもスピーカーが設置され、総数は35台に上る。レーシングカーの下の子機は親機からの電波が届きにくい場所にあったため、天井の照明用ダクトレールに設置した中継子機経由で接続されている。
ミュートラックスの中継子機を使用することで、現場に合わせた電波のルーティングが可能になり、オーディオケーブルの敷設が難しい場所でも、ワイヤレスで高品質な音を届けることができるようになった。