EV販売過去最高も成長鈍化、気候目標に暗雲
ブルームバーグNEFが発表した調査リポート「電気自動車(EV)の長期見通し」によると、電動化技術の進歩とバッテリー価格の低下に伴い、全市場においてEVの導入は政策主導から消費者需要主導へと移行しつつある。BNEFのベースシナリオでは、2027年の乗用EVの販売台数は3,000万台を超え、2040年には年間7,300万台まで増加する見通しだ。
しかし、ネットゼロの軌道に乗るためには、一つを除くすべての車両セグメントで強力かつ慎重に構造化された政策支援が依然として必要とされている。BNEFのネットゼロ・シナリオによると、2050年までに全世界でゼロエミッション車を実現するには、2038年ごろまでに内燃機関車の販売を停止する必要がある。経済移行シナリオでは、北欧諸国のみが2038年までに内燃機関車の全廃を達成する見込みだ。
現在、今世紀半ばまでにネットゼロを達成する軌道に乗っているのは、道路交通のうち三輪車セグメントのみである。一方、この目標達成から最も乖離しているのは大型・中型車両だ。電動車および水素燃料電池車は、2030年までに世界のトラック販売台数のわずか18%、2040年までに43%を占めるにすぎない。
EVの普及は、もはや裕福な国だけの現象ではない。タイ、インド、ブラジルなどで、地元の消費者をターゲットにした低価格のEVモデルが発売され、記録的な販売台数を達成している。EV市場で世界をリードしている中国は、一部のEVセグメントに飽和の兆しが見え始めているものの、世界最大のEV市場としての地位を維持するだろう。
ネットゼロへの移行から価値を獲得するための産業戦略を実施する国が増えるにつれ、気候変動対策目標がますます達成できなくなるリスクがある。各国政府は、競合する優先事項を慎重に判断し、競争や手頃なEVの購入を阻むような政策を回避する必要がある。
BNEF電気自動車部門統括のアレクサンドラ・オドノバン氏は、「2050年までに道路交通ネットゼロを達成するのはまだ可能だが、一段と迅速な進展が求められている」と述べている。