IFS調査、産業現場のAI活用が経営層に先行―90%超の企業が信頼性とパフォーマンスの向上を報告
IFSの年次調査、産業用AI活用で現場の実行と経営層の戦略に隔たり
CATEGORY: テクノロジー
産業用AIソフトウェアを提供するIFSは、米国フロリダ州オーランドで開催中の「IFS Unleashed」において、年次調査「IFS Industrial Index 2026」の結果を発表しました。14カ国の上級意思決定者2,200名以上を対象とした今回の調査により、産業用AIの活用をめぐって現場の実行と経営層の戦略との間に大きな隔たりがある実態が明らかになりました。現場の従業員がAIの実用化を牽引して成果を上げる一方、正式なガバナンス枠組みやデータアクセスの仕組みが追いついていない状況が浮き彫りとなっています。
業務時間の短縮と直接的なコスト削減を実現
エンジニアや工場長、サービス責任者、物流マネージャーなどの現場チームが専門知識と運用データを産業用AIと結び付けたことで、主要業務における直接的なコスト削減や業務効率化が確認されています。世界の企業の90%以上が信頼性とパフォーマンスの大幅な向上を報告しており、具体的な成果として以下が挙げられています。
- 93%が初回完了率(First-Time-Right)の改善を報告
- 90%が資産稼働率の向上を報告
- 88%が納期遵守率の改善を報告
生産スループットや品質保証などの主要業務では従業員の業務時間が50%以上短縮されました。創出された余力は、従業員の安全、研修、業務コンプライアンス(36%)、資産のパフォーマンスと信頼性の最適化(35%)、継続的なプロセス改善(26%)、市場シェアの拡大(25%)といった取り組みに振り向けられています。
現場主導のデジタルワーカー育成と経営層とのギャップ
現場主導による人材や業務プロセスの変革も進んでいます。調査結果によると、現場の取り組みとして以下の状況が示されました。
- 43%が過去12カ月間にエージェント型デジタルワーカーを育成し、日常業務に導入
- 37%が同僚に対し、日常業務で産業用AIツールを使えるよう指導
- 36%がデジタルワーカーと協働できるようスタッフを直接指導
これに対し、同じ期間に経営層が最も注力したAIの取り組みは、管理職自身のAIリテラシー向上に向けたスキルアップ(41%)でした。回答者の27%はAIリテラシーを組織の備えとして重要な第一歩と捉えているものの、現場の実行は先行して進んでおり、経営層の自信不足(30%)が成果を拡大する上での障壁の一つとなっています。
IFSの最高製品責任者(CPO)兼 最高顧客責任者(CCO)のキャシー・ホールは、現場の従業員が自社のデータを理解して成果を出しているとし、経営層の課題はAI導入を促すことではなく、成果を安全に広げるための運用基盤やデータパイプライン、ガバナンスを整えることだと指摘しています。
AIガバナンスと統制の不足がもたらすリスク
現場主導の導入が進む一方で、運用上の安全対策やガバナンスの不足が懸念されています。70%以上の組織が自社の安全ポリシーやデータポリシーに自信を示しているものの、重要な場面での統制状況には以下のような課題がみられます。
- 安全性や品質を左右する工程、ミッションクリティカルな工程でAIの出力を検証しているのは、わずか11%
- 機密データや輸出規制対象データを用いたAIの利用に管理の仕組みを設けているのは、わずか11%
- AIが支援する意思決定に、人間による監督または承認を義務付けているのは、わずか4%
- 運用上の失敗が最も重大な影響を及ぼすサプライチェーン管理や設備保全計画(MRO)に、産業用AIを組み込んでいるのは、わずか20%
検証されない出力の利用やデータの流出、人間が責任を持たない意思決定など、統制を欠いたエージェント型AIの大規模展開は業務上のリスクにつながりかねない状況となっています。
調査の概要
今回の調査「IFS Industrial Index」は、以下の条件で実施されました。
- 調査対象:オーストラリア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、サウジアラビア、スウェーデン、アラブ首長国連邦(UAE)、英国、米国の18歳から65歳までの経営層および現場従業員2,275名
- 対象企業の規模:従業員数500名超、年間売上高2億5,000万ドル超
- 対象業種:製造、航空宇宙・防衛、エネルギー・公益事業、建設・エンジニアリング、運輸、通信
- 調査期間:8月17日から9月3日
- 調査手法:Censuswide社によるオンライン調査
本記事はIFSの発表をもとに作成しました。
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