観光業界の景況感好調、インバウンド需要が牽引

観光産業の景況感が18カ月連続で全産業の景気DIを上回っている。2023年5月に新型コロナウイルスが5類へ移行して以降、国内の観光産業では、2024年の各指標がコロナ禍前の2019年を上回る推移を見せているという。能登半島地震や大雨などの自然災害、南海トラフ地震臨時情報の影響などの不安要素もあるものの、インバウンド需要が下支えしている。

帝国データバンクが毎月実施しているTDB景気動向調査で算出した観光DIの推移を見ると、2023年3月から2024年8月まで、18カ月連続で全産業の景気DIを上回った。2024年8月の観光DIは47.2と2カ月連続で改善したが、企業からは地域によって違った声が聞かれる。

日本政府観光局(JNTO)が発表した「訪日外国人客数」によると、2024年の訪日外国人客は1~7月までの合計が2107万人に達し、前年同期の1303万人を上回った。一方、「主要旅行業者の旅行総取扱額」(観光庁)の内訳を見ると、2023年度の「国内旅行」は2兆3559億円とコロナ禍前の2019年度に迫ったものの、「海外旅行」は1兆699億円と、円安や物価高の影響などにより回復が遅かった。

2024年度に入ってからも、「海外旅行」の回復は鈍く、「旅行総取扱額」の2024年4~6月の累計総額は、前年同期を7.1%上回るにとどまり、通期でもコロナ禍前の2019年度を上回るには厳しいペースにある。

インバウンド需要を背景に観光DIは全産業の景気DIを18カ月連続で上回っているが、多少の円高が進んだことでマイナスの影響が懸念される。人手不足やオーバーツーリズムなどの経営課題に対処しながら、新たな旅行需要を掘り起こす必要がありそうだ。